そこそこ洒落たね、赤い革のケースをね、買ったわけですよ。
完全に自分用。革だからお父さんにあげるとか、赤いから女の子にあげるとか、そういうんじゃなくて、完全に自分用。クリスマスもすぎたけどまぁ正月これからだし、でも完全に自分用。
でまぁ、「ギフトラッピングはどうされますか?」って、見目麗しい店員のお姉さんが訊いてくるわけ。もちろん答えはノーサンキューですわ。ぜんぶ自分で使う。ぜんぶ自分のため。ちょっと高い買いものかもしれないけど、すべてはフォーミー・フォーマイセルフ。
ここでかかってきたわけだ、電話。着信が、ジーンズの左ポケットにいつも入ってるケータイに。
「いまギフトラッピング断るのでいそがしいから!」と応対するすべもなく、一瞬、ほんの一瞬ではあるんだけど、店員のお姉さんと僕とのあいだに間が生じた。ラッピングを訊ねるお姉さん、断ろうとする僕、それを遮断するバイブレーション。
「あー………」と、目だけ左斜め下に見やり電話を気にしながらも、お姉さんのほうへと意識をかたむけた。お姉さんと向きあった。が、時すでに遅しだった。
お姉さんはその間にレジ横からさっと一瞬でボードを取り出し、「いまこの4種類から紙をお選びいただけまして、リボンはこちらとこちら、よろしければ柄モノもご用意できます。お時間のほう少々いただくことにはなるんですが、どうされます?」
まさしく瞬殺劇だった。ちょっとケータイを気にしてるあいだに、はなしの流れはギフトラッピングする方向へと着然と進みはじめていた。いまさらさっきの間をなかったことにして、「じつは自分用なんです、てへ」なんて言えるわけがない。
最終手段(ファイナル・ウエポン)だ。
「あの、贈りものなんですけど、ラッピングは自分でしたいので、けっこうです!」
反逆のひとことを放った。「あ、よかったら紙とリボンだけでもいっしょに袋にお入れ………」とお姉さんはなおも追撃の手をゆるめなかったが、「ぜんぶ自分でしたいんです! フツウの袋に入れてください!」という一点張りの一辺倒な対応で逃げきった。
会計を終えたあと、電話アプリを開いて、着信履歴からかけなおそうとしたら、おなじ人物からメールが一件きていた。高校のときバンドやってた関係で知りあったマカズというヤツからだった。内容はこんなだった。
「いま電話NG? 来年1月4日に飲み会しない?」
すぐさま軽やかな親指さばきでフリック入力を駆使し「キルユー」とだけ打って店を出た。
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自己紹介

- レオ
- 好きな言葉は「アイスクリーム4割引」、嫌いな言葉は「ハーゲンダッツは対象外」です。趣味はドラえもん考察。読売ジャイアンツのファン。高2のとき現代文の全国模試で1位に輝くも、数学に関しては7の段があやしいレベル。
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