普段からジム・ダンロップの赤(いちばん薄いやつ)をずっと使ってて、それはなんとなくしっくりきたというか、ピンときたというか、とにかく手に馴染む感覚があったからずっと使ってるだけなんだけども。ただ、友人の超巧ギタリスト葵くんをして「俺はいろんなピック試したなぁ」と言わしめるほど、ギタリストにとってピックはもはや身体上一部をなすツールだ。自分にあったピックを見つけるのが、なかなか叶わないひともいるだろう。
先日知人からCLAYTONという鷹だか鷲だかがプリントされているピックをいただいて、薄さもかたちも普段使ってるのとよく似てたから試してみるかぁと思って、人生初CLAYTONでTakamineのアコースティックギター(名前を決めるとか言うておきながら決まってない。だれか決めて)を弾いてみた。そのときに思った。
むりむりむりむりむりむりむり。
CLAYTONのピックは、「ウルテム」という、人間の爪に最も近いとされる材質でできている(と葵くんがむかし言っていた)。これは、おそらく長所なんだけども、ピックの先端部で上手にヒットできたときはいいとして、誤ってピックが潜り込んで弦をピックでこするようなかたちになったとき、ものすごく気持ち悪いと思った。
たとえるなら、すりガラスに爪を立てたとき。あれに近い。
己の未熟さに起因するところではあるんだが、どうしても勢いよくストロークするときなんかにヒッティングが強くなってしまいがちな自分としては、多少の勢いでピックが潜るのはわりとミスヒットでもなく日常茶飯なことだ。
いつも使っているジム・ダンロップのピックは、そんなことがない。トーテックスという丈夫かつ柔軟が売りの素材で、かめのイラストがお茶目。「かめの歩みで」を座右の銘とする僕には嬉しい。このピックは、厚さ薄さごとにカラーリングが異なり、いちばん薄いものが赤色で、0.50mmだ。
ちなみに、もらったCLAYTONのピックは0.56mm。「いや、差、0.06mmって」って自分でも思うんだが、できるだけ薄いピックのほうが弾きやすい僕にとってこの0.06mmは本当に大きい。そういう意味でもCLAYTONはあまり馴染めなかった。
CLAYTONにせよジム・ダンロップにせよ、大概の楽器店で買えるのは大きな魅力である。ツアー先でピックが必要になった(というようなケースがあるのかないのかはわからないが)ときにも、最寄りの楽器屋に行けば大体どっちも各種揃っている。
だから、きっと双方に良さがあると信じて、どちらもUSA製で品質も違わないし、と締めたいところだったんだが。
唯一、ジム・ダンロップのピックにもの申したいところがある。その形状である。
薄さはいい。っていうかむしろそんな薄くて頑丈なのつくってくれて本当に感謝している。しかし、その形状なのだ。
ピックは三角形、と序文にも述べたが、じつは三角形ではない。ジャズ型、ティアドロップ型、と様々な種類の形状があるなか、トライアングル型と呼ばれるこの種のピックですら、正三角形の形状は原則的にしていない。三角形の三辺がそれぞれ外側に膨らんで、弧を描くような、絶妙なおにぎり型をしている(だから、おにぎり型と呼ぶこともある)。
この弧の描きかた、膨らみ加減は、基本的にはどのトライアングル型のピックも同様である。みんな同様に膨らんで、みんな同様に弧を描いている。
しかし、ジム・ダンロップのトライアングル型のピックは、膨らんでこそいるものの、どちらかというとまっすぐに近い程度のものでしかない。これが、気に食わない。なんで?って思う。
演奏製を左右するピックの形状は、すべからく同一であるべきだろう。ジム・ダンロップ氏に問いたい、なんでそこで個性を出した? なんでそこで自社表現を入れた? ピックの個性の出しかたはそこじゃないだろ。
思い返せば高校時代、曲がりなりにも地元じゃ有名な学ランの進学校で、ファッションで個性を出そうという無用な意識を、誤った感性で育てていた過去の僕のようだ。ジム・ダンロップ、これは俺か? 俺自身か? 菅田将暉より10年はやく、まちがいさがしの答えになっていた、あのときの。
いまでは、CLAYTONのピックとジム・ダンロップのピックが並んでるのを見るたびに、「この必要のない表現よ」と過去の自分にダメ出しをする気分である。どうしてくれよう。
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